序文
マジックにおいて一口にアドバンテージと言ってもいろいろあります。主要なものはカードアドバンテージ・テンポアドバンテージ・ライフアドバンテージ等でしょうか。僕はここで、リミテッドにおける「点数アドバンテージ」という概念を新たに提唱してみたいと思います。

スタンダード・レガシー等の構築戦では好きなカードを好きなだけ使うことが出来ます。よって、デッキ60枚の内のカード一枚一枚の質の差は殆ど無いと言って良いと思います。
しかし、リミテッドを考えてみるとそうではありません。40枚の中に明らかにカードパワーに差があるカード達が混在しています。「4マナ3/3バニラ」が入っているデッキに一方で同時に「4マナ3/3能力付き」が入っていたりします。
このようなことが起こる原因は、リミテッドでは構築と違ってカードを自由に選択できるわけではないからです(わざわざ説明するまでもない当たり前のことですが(^_^;))。
そしてここで簡単な質問をしたいのですが、あなたがこれらの2体のクリーチャーをコントロールしている時に、相手の攻撃してきた「4マナ3/2バニラ」をブロックして相打ちを取ろうとするならば、どちらのクリーチャーでブロックしますか?よほど特別な事情がない限り当然「4マナ3/3バニラ」でブロックすると思います。何故ならその方がより質の高いクリーチャーが場に残るからです。
99%のプレイヤーは普段同じような場面で当然のように同様の選択をしていると思います。が、この選択はテンポ・カード・ライフアドバンテージのどの概念でも説明できません。そこで以前から存在していたこのような考え方の基準となるものに名前をつけて視覚化しようと試みたのが「点数アドバンテージ」になります。
これはマジックにおける共通の概念ではなく、マジックのリミテッドにおける特別な概念なので今まであまり注目されて来なかった、と僕は考えています。

点数アドバンテージとは。
点数アドバンテージという名前の「点数」の部分はリミテッドにおける「点数表」のイメージから来ています。
点数アドバンテージはその行動によって何点分の点差が出来たか、という測り方をします。
先程の問題で具体的に説明しましょう。仮にリミテッドの点数表においてA「4マナ3/3バニラ」を6点、B「4マナ3/3能力付き」を7点、C「4マナ3/2バニラ」を5点であるとします。点数アドバンテージの概念で考えるとCをAでブロックする行為は-1点、CをBでブロックする行為は-2点。よってAでブロックしたほうが良いということになります。また、こちらがどのような選択をするにせよ対戦相手は点数アドバンテージ(以下点アドと略す)を獲得することになります。

総点数=デッキパワー
さらにリミテッドにおけるデッキの総点数というものも考えてみましょう。
ドラフトにおいて(話を簡単にするためにカットはぜずピックしたカードは必ず使えるものとしさらに順当に強いカードが流れてくるとする…条件をつけ始めたらきりがないので、あまり細かいこと言わなくても言わんとしていることは察して下さいm(_ _)m)1手目は強いボムをピック、2~4手目は主力となるような部分、5~8手目ぐらいは縁の下の力持ちとなるような強いカードを支えるカード達をピックすることになると思います。
これを手数とその時に取れるカードの点数を表にしてみるとだいたい下のような感じになります。
手数[点数] 1[9] 2[8] 3[7] 4[7] 5[6] 6[6] 7[5] 8[4] 9[3] 10[3] 11[2] 12[2] 13[2] 14[1]
デッキは40枚で基本的には23枚のカード+土地17枚なのでだいたい8手目までのカード×3パック分でデッキを組むことになります。
このデッキに入っているカードの点数の合計を数えてみましょう。
1~8手目までのカードの点数を合計して9+8+7+7+6+6+5+4=52
それが3パック分なので52×3=156になります。
よって点アドの概念で考えた場合、このデッキの総点数=潜在的なデッキパワーは156ということになります。
この点数が高いほど所謂「強いデッキ」になり、お互い平均的なドローをし、お互いの技術が等しい場合点数が高いデッキの方が勝つことになります。

相打ち
点アドの概念で考えられる例をここでひとつ挙げたいと思います。
リミテッドでよく起こるもののうちの一つは2マナパワー2同士の攻防だと思います。
ここで安易に相打ちをしていませんか?
極端な場合、A「2マナ2/1バニラ」とB「2マナ2/2能力付き」の相打ち、というものも起こりうるわけですが、「2マナ2/1バニラ」は4点くらい、「2マナ2/2能力付き」は7点くらいだとすると、この2体のクリーチャーの相打ちは3点の差が生じることになります。
更にこう考えることも出来ます。お互いが順当に同じようなピックでデッキを作っているならAを失ったプレイヤーは8手目でピックしたカードを失っただけですが、Bを失った方のプレイヤーは3,4手目でピックしたカードを失っています。逆に考えればBのデッキには8手目のカードの1枚が未だ残っているのに対して、Aのデッキにはその枠に3,4手目でピックしたカードが眠っているのです!これは大きな差になります。
(先程のデッキパワーで考えればこの相打ちによってAのデッキパワーは156-4=152、Bのデッキパワーは156-7=149に変化したと考えられます。)
これは特に点差が極端な場合の例ですがもっと少ない差の場合でも同じことが言えます。
そして、その点差が少ないほど(しかし点差は確実にそこにある)中級クラスのプレイヤーでもときとして点アドを失う行動をとっている場合があります(勿論テンポ・ライフ差はほぼ完全に無視できる場合にです)。直接失うわけでなくても得る機会をミスミス逃して相対的に失う場合もあります。
点アドを失わないために、時としてアタックしない・ブロックしないの選択肢を取らなければならないことがあるということです。
勿論ほとんどのプレイヤーはわざわざ言うまでもなく感覚的に「ここでこいつと相打ちをするのは勿体無いからこの攻撃は通そう」と普段から自然に考えて行なっているプレイングだとは思います。しかしこれからは「ここで相打ちを取ると点アドを○点失うから得られるテンポライフアドとは割に合わないな」とより論理的に考えてみる、というのも面白いかもしれません。

シナジードラフトは低い点数の底上げ
最近は特にシナジーがあるドラフトをすると強いデッキができると言われていると思います。僕もシナジードラフトは大好きです。シナジーを意識しすぎて弱いカード満載のデッキを作って負けることがよくあります(^_^;)
シナジードラフトを点アドで考えると「カードの点数をシナジーによって擬似的に高く計算できる」というものがシナジードラフトになると思います。
特にシナジーの真髄は、他のデッキでは使えないようなカードを受け入れられる様な構造のデッキ作りを心がけ、安い順目で流れてきたカードをシナジーによって強力に使うことです。
綺麗にシナジードラフトができた場合、後半の2,3手のピックが1~2点擬似的に高く見積もることが出来るようなピックになると思います。
先程のデッキの総点数で考え並べてみると
手数[点数] 1[9] 2[8] 3[7] 4[7] 5[6] 6[6] 7[5] 8[4]:シナジーが含まれないデッキ

手数[点数] 1[9] 2[8] 3[7] 4[7] 5[6] 6[7] 7[6] 8[6]:シナジーが含まれないデッキ
これはかなり極端ですがイメージはこんな感じです。
すると1パックにつき+4点で3パック合計で+12点されることになります。
156点のデッキと168点のデッキ、この差がシナジードラフトの強さになるんですね。

除去について。
「リミテッドにおいて除去は取り敢えず強い」と言われています。これ自体はそう間違っているとは僕も思いませんが、さらにときどき「相手のクリーチャーが除去られている(盤面からいなくなる)のだから弱いわけがない」というような言われ方もします。これを字面のまま信じているのでは除去に対して間違った認識をしていることになります。盤面だけを見れば相手のクリーチャーだけがいなくなって有利な状況に確実に一歩前進したかのように見えますが、除去呪文というものは自分もカードを1枚消費しているので、やっていることは実はただの1対1交換でしかないのです。では何故除去呪文というものは強いのでしょうか?

そうですね、テンポが取れるからです。

基本的にはクリーチャーというものにはまず召喚酔いというものがあります。召喚してから自分のターンが回ってこないと攻撃に参加することができません。対して除去呪文というものはプレイして即座に効力を発揮します。こうして1ターン分の差が生まれます。
また相手の5マナ6マナのクリーチャーを1,2マナの除去で対処した場合も膨大なテンポアドバンテージを得ることが出来ます。
…。

というのは冗談ですw

「テンポが取れる」これも嘘ではなく重要なことですが特にリミテッドにおける除去において最も重要なことは最も点アドを取り易いカードということです。
点アドが取れるとはどういうことでしょうか。
除去というものは基本的には相打ちを取るカードです。クリーチャー呪文よりも幅広く相打ちを取れるカード、と思えばほとんど正解です。つまり、クリーチャーでは基本的には相打ちによってせいぜい1点程度の点アドしか稼げないのに対し、除去呪文というものは除去の質にもよれど、かなり高い点数のカードとまで相打ちに持ち込むことが出来るのです。そして逆も言えます。除去というものは低い点数のカードと相打ちすることも容易に出来るのです。
つまりリミテッド点アドの概念においては除去呪文は最も自由度が高く最も重要なカードであることが分かると思います。本当に必要な時まで大事に温存し、ここぞというときに相手の大物を討ち取る。これが一番強い除去の使い方であり、安易に中堅クラスのクリーチャーに使ってしまうようでは点アドを得る機会を自ら失うことになります。
とても分かりやすく言えば「除去というのは相手のボムに対処する手段なので強い」ということですね。

まとめ
・リミテッドにおいてはテンポ・カード・ライフアドバンテージの他に点アドというものがある。
・常に点アドを取るような行動を心がける。毎ターンごとの小さな積み重ねが、大きな差になって現れる。
・積極的に点アドを取るためには
① シナジードラフトを心がける。
② 除去を大事に使う。

編集後記
全部ネタです。

自分のリミテッドについての考えをまとめようと思って筆を取ろうとしたらふと変な考えが思いつきどんどん内容が膨らんでしまった。
点数アドバンテージなんてこれを書くに際して思いついたもので普段から意識しているものでは勿論無い。しかし、自分が書きたかったことを上手く説明できるので(始めに書きたかったのはシナジーの話と除去の話だけ)利用してみました。
半分くらいネタみたいなものだが、これを読んであなたにとって何か参考になる部分が少しでもあったなら書いた甲斐があったと思えるので嬉しいです。

コメント

再リーマン
2012年5月27日11:17

すげえ、かもしれない

KANI
KANI
2012年5月27日17:02

漠然とプレイしてしまうことが多いのですごく参考になりました。面白かったです。

saishi
2012年6月11日11:58

昨日のCCCドラフトで1つ下だった者です。
点数アドバンテージ論、とても参考になりました。
リンクさせて頂きましたので、よろしくお願いいたします!

Mizy/ミズイ
2012年6月21日7:42

アドバンテージという言葉に反応して覗きましたが、この理論 頷きながら読ませていただきました。

たとえば、場が均衡しているときに除去を温存するか使うかは「割に合うかどうか」で決めますが、
そういう概念を上手く表現できるようになってるなあ…とか。ほんと興味深いですね

syoei
2012年7月16日16:08

>>ALL
遅レスですみません。どの記事でも頂いたコメントはいつも読んでいて返そうとは思っているのですが中々筆が重くて…。m(_ _)m
この記事は自分でも力を入れて書いた記事で、全部ネタですといえども真面目に書いたものなので、評価して頂けるのはほんとうに嬉しいです。ありがとうございました。

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